「昭和街場のはやり歌」前田和男著
「昭和街場のはやり歌」前田和男著
1960年から1970年は安保闘争が激越を極めた時代だった。その運動を継承しようとする動きがあるが、著者は、頭では理解できても情緒的には無理だと感じた。
それを象徴する同時代の歌が西田佐知子の「アカシアの雨がやむとき」。この歌に当時の全共闘運動の参加者が自分たちの挫折を投影して「60年安保闘争のレクイエム」とする説がある。当時の全学連執行委員は、退屈で投げやりな気分のときにはぴったりだったと述懐する。だが5歳下の著者の世代にはこの歌は洗練されていて詩的すぎた。彼らが歌ったのは「網走番外地」だった。
ほかに、「カチューシャ」はロシア民謡ではなく、アメリカのジャズにならったソ連製ジャズだったなど、意外な話が満載。
(彩流社 2750円)