「自由とセキュリティ」杉田敦著

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「自由とセキュリティ」杉田敦著

 ここ数年、パンデミックをはじめ、世界各地での理不尽な紛争や繰り返される国内の災害などのニュースに触れるたび、不安のトゲが人びとの心に突き刺さり、セキュリティーへの強い要求が社会を覆い始めたと著者は言う。

 セキュリティーとは不安がないことを意味し、セキュリティーの危機は安定的な秩序への渇望を生む。多元性や自由は不安定につながると避けられ、一元性や強権が求められるようになり、自由の重視を標榜してきた社会さえ、変質の兆しを見せ始める。

 本書は、社会の「多数者の専制」に抗して個人の選択を擁護した19世紀のJ・S・ミルをはじめ、自由を強調する政治理論とセキュリティーを強調する政治理論、それぞれを唱えた思想家6人の作品を読み解きながら、セキュリティーと自由との関係を考察するテキスト。

(集英社 990円)

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