「祖父・鈴木貫太郎」鈴木道子著、保阪正康監修・解説
「祖父・鈴木貫太郎」鈴木道子著、保阪正康監修・解説
鈴木貫太郎は海軍大将で枢密院議長も務めていた。昭和20年、東条英機内閣の後の小磯内閣も倒れ、重臣会議で鈴木に白羽の矢が立った。「軍人は政治に干与せざるべし」という明治天皇の聖論を奉じていた鈴木は固辞したが、昭和天皇に「政治にうとくてもよい。他に人はいない」と懇願され、受けることに。
陸軍は戦争完遂を条件とし、鈴木はそれをのんだが、家族に「自分はバドリオになるぞ」ともらした。イタリアの軍人、ピエトロ・バドリオはムソリーニ失脚後、首相となり、連合国と休戦条約を結んだが、日本では売国奴と罵られていた。鈴木は家族にだけ終戦の意思を伝えたのだ。
終戦時の首相の孫が知られざる秘話を語る。 (朝日新聞出版 2090円)