著者のコラム一覧
井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

gururi(谷中)「年齢秘密の“架空の女性”が読みたいだろう本を選んでいます」

公開日: 更新日:

「へび道」と呼ばれる千駄木~根津の細いぐねぐね道。つくつくぼうしの鳴き声を聞きながら歩くと、1階の部分が白くペインティングされた2階建てのリノベ集合建物が見えてきた。あ、ここだ。

「すてきな建物ですねー」

「2階にお風呂なし部屋があるアパートだったみたいです。40~50年前の」

 店主の渡辺愛知さん(45)とそんな会話から。

 店内の壁も白い。真ん中の丸いテーブルに面陳列されている「男はクズと言ったら性差別になるのか」「わたしはわたし。あなたじゃない。」など、はっきりしたタイトルの本に、まず目がいっちゃうなー。

雑貨も並ぶ5坪の店内に新刊ばかり200冊

「コロナ禍の2021年2月に、『何をバカなことを』と親戚中から言われたけど(笑)、始めました」

 渡辺さんは広告会社勤務だったが、ケガと病気で退職。療養生活中に、「本屋さんならゆっくり働けるか」と、住まい近くの往来堂書店でアルバイトしたのが、店を開くきっかけになったそう。

女性の雑誌、本の棚を任されたんです。ファッション誌、実用書、読み物。20代、40代、60代の“架空の女性”3人を頭に描き、彼女たちが読みたい本で棚を作りました」

 面白い! この店はその延長ですか?

「そうですそうです。今は年齢は秘密の“架空の女性”1人を頼りにしています。理不尽なことがあっても一生懸命働いていて、クタクタだったり、社会問題が気にかかったりする女性。彼女が読みたいという本を選んでいます」

 約5坪の店内に、選び抜いた新刊ばかり200冊。フェミニズム寄りの本が多いが、「大都会の愛し方」「ダーリンはネトウヨ」なども潜み、ストイックではなさそう。それが証拠に、同行カメラマンが西尾勝彦著「のほほんと暮らす」を手に取って繰り、すぐに「買います」と。

 おっと、私のこの夏のベスト2、柚木沙弥郎著「美しい本の仕事」と岡野八代著「ケアの倫理」があるじゃない。さらに「大塚女子アパートメント物語」を発見。敬愛するライターの川口明子さんの力作、とはいえ2010年刊の本だが「コンスタントに売れています」と渡辺さん。“架空の女性”さすが。と、心の中で小躍りした。風合いの良い器やペンも販売。

◆台東区谷中2-5-14C/地下鉄千代田線千駄木駅から徒歩6分、根津駅から徒歩7分/12~18時(金曜のみ12~20時)、月・火曜休み

わたしの推し本

「家父長制はいらない『仕事文脈』セレクション」仕事文脈編集部編

「2012年から、年2回ずつ刊行されている『仕事文脈』という小さな雑誌があるんです。そこに掲載されたジェンダーやセクシュアリティー、フェミニズムにまつわる原稿をまとめた一冊です。男女の社会的ポジションや賃金格差、進まない夫婦別姓、同性婚などの大本に『家制度』の名残がある。タイトルが表すように、そこを解体していきたいという意図が込められています。じわじわと売れていますね」(タバブックス 1540円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  2. 2

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  3. 3

    「かなり時代錯誤な」と発言したフジ渡辺和洋アナに「どの口が!」の声 コンパニオンと職場で“ゲス不倫”の過去

  4. 4

    中居正広氏「性暴力認定」でも擁護するファンの倒錯…「アイドル依存」「推し活」の恐怖

  5. 5

    「よしもと中堅芸人」がオンカジ書類送検で大量離脱…“一番もったいない”と関係者が嘆く芸人は?

  1. 6

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  2. 7

    入場まで2時間待ち!大阪万博テストランを視察した地元市議が惨状訴える…協会はメディア取材認めず

  3. 8

    米国で国産米が5キロ3000円で売られているナゾ…備蓄米放出後も店頭在庫は枯渇状態なのに

  4. 9

    うつ病で参議員を3カ月で辞職…水道橋博士さんが語るノンビリ銭湯生活と政治への関心

  5. 10

    巨人本拠地3連敗の裏に「頭脳流出」…投手陣が不安視していた開幕前からの懸念が現実に