手文庫(神保町)文庫が前後二重に大量に並ぶさまが圧巻!

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 気になっていた。いつからか神保町に出来ていた小さな古本屋さん。

「うち? 2019年2月からです。その前、4年間は小川町でやっていましたが、立ち退きにあって」と、店主の的場美枝さん。さらにその前は10年ほど、靖国通り沿いのあの「@ワンダー」で働いてらしたとか。

 店内に入って、私の場合は「もの食う人びと」「死線」「明治を生きた男装の女医」の単行本3冊とまず目があったが、選書の中心は「日本文学、海外文学の文庫」だ。

 と、その前に。

「私、母譲りのお裁縫好きで、こんなの作ってて」と、的場さんがレトロモダン柄のすてきなブックカバーを見せてくださる。売り物ですか?

「はい。300円です」

 すぐさま「買います」。カメラマンさんとハモってしまった。

お手製レトロモダン柄のブックカバーも

 約25平方メートルの店内に、私の目算では1万冊。文庫本が各棚とも前後二重になって大量に並ぶさまが圧巻だ。手前に岩波文庫。相当古そうな茶色の文庫も多いなあ。と眺めていると、「これは、ちょっと背が高いでしょ?」と、1冊を取り出してくれ、「岩波文庫は昭和2年7月に刊行が始まったんですが、その時のもの」。

 縦16センチ。ゲーテの「ギルヘルム・マイスター」。横書きのタイトルが右から書かれている。「昭和16年になるとA6判に。やがて表紙の絵も少し変わってきて」などと、「岩波文庫の80年」を手に語ってくださる的場さんに、「文庫分野の沼に心地よくハマってらっしゃる」と、うれしくなる。

 講談社学術文庫がたっぷりの棚あり、海外文学、日本文学それぞれに版元を分けずに作家名が50音順で並ぶ棚あり。さらに、詩歌にノンフィクション。店内右手に入り込むと、岩波文庫に対抗して安価で出された「改造文庫」や、1950年代に黄色のカバーで発行された「河出文庫」も十二分に。いやはや文庫の宝庫たる店だ。

 ちなみに「東京の神社についての本がほしいんですが」と言ったら、的場さんはすぐさま4冊見繕ってくれた。

◆千代田区神田神保町3-11-1 安田神保町マンション101/℡03・5577・4102/地下鉄各線神保町駅A1出口から徒歩3分/11~19時、日曜休み

わたしの推し本

「二人の愛人」アルフレッド・ド・ミュッセ著、新庄嘉章訳 細川書店 1500円(売値/しおり付き)

 フランス人文学者、アルフレッド・ド・ミュッセ(1810~1857年)の短編小説。包装材会社の細川洋行(千代田区)が戦後期に設けた出版社「細川書店」が1948年に発行したもの。

「フランス的な瀟洒(しょうしゃ)さのある、ワインカラーの装丁が見事です。金紗地の模様を写真凸版で5度刷りをしているそう。かざす角度によって、光り方も色感も違うんですよ。見に来てください」

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