「迷惑な終活」内館牧子著
「迷惑な終活」内館牧子著
主人公の原英太は75歳。後期高齢者に入るとあって、妻の礼子はエンディングノートやら遺言状やらの終活を始めろとうるさいが、なぜ生きているうちから死の準備をしなきゃいけないのかと思うにつけ、無視し続けている。
しかし、そんな英太があることをきっかけにして突如、終活に目覚める。それも礼子が説くような残された人が困らないようにする終活ではない。生きているうちに自分の人生のケリをつけるための活動こそ本当の終活だというのだ。
英太は、高校時代に片思いをしていた女性を傷つけたことをいまだに悔いていた。彼女に一度会って謝りたいという切なる願いを実行することこそ、自分にとっての終活だと宣言した英太は、周囲に呆れられたり冷やかされたりしつつも、なんとかツテを見つけて彼女にたどり着くのだが……。
「すぐ死ぬんだから」「老害の人」など、高齢者の日常を生々しく描く著者の高齢者小説シリーズの最新刊。残された日々を自分が悔いなく生きることを目標に動き回る主人公と、そこに巻き込まれながら影響を受けて好き勝手に生き始める周囲の人々が切なくも愛らしい。
(講談社 1870円)