「お城の値打ち」香原斗志著
「お城の値打ち」香原斗志著
かつて日本には3万以上もの城があったという。その大半は土塁を構築した「土の城」で、水堀に囲まれ、高い石垣がそびえ、天守や櫓が立ち並ぶ城は、全体の1~2%ほどに過ぎないという。
天守がそびえるこうした「近世城郭」は、織田信長が権力を誇示するために築いたのが始まりで、明治維新の時点では七十数棟が存在していた。しかし、現存するものはたった12棟だけになってしまった。その12棟も、世界文化遺産の姫路城でさえ往時の姿からはかけ離れているという。
本書では、政策や災害、戦災、経済的理由で破壊されてきた近世城郭の受難の歴史をたどり、日本においての城の存在意義や、それぞれの時代においての役割、そして城が置かれている現況まで概観しながら、今後について展望したテキスト。
(新潮社 990円)