「潤日」舛友雄大著
「潤日」舛友雄大著
いま中国では「潤」という言葉が流行している。元来「儲ける」を意味する言葉だが、ピンインでRunと書くため、よりよい暮らしを求めて国外へと脱出する人々を指すようになった。目指す国は世界各地に広がるが、急増中なのが日本を目指す人々だ。
著者は、以前、中国で知り合った友人が潤日後に亡くなったことを契機に、中国移民の取材を本格的に始めた。本書は、なぜ彼らは祖国を去るのか、なぜ日本を選ぶのか、中国移民のさまざまなタイプなどを深掘りしつつ、かつての就労目的の留学生とも話題のインバウンド客とも違う新タイプの中国移民の実態に迫る。
「潤日」が加速した理由に、中国の厳しいゼロコロナ対策があった。さらに言論統制、暗号資産の禁止、受験競争、円安やビザ取得の容易さ、距離の近さなども背中を押した。受験戦争に参戦する富裕層の子、不動産買いで資産保全を図る中年層、閉鎖的な言論空間から抜け出そうとする知識人など彼らは思いのほか多種多様だ。
資金移動のための地下銀行や本格的な華語書店の相次ぐ開店など、日本人の知らない世界が広がっていることに驚かされる。
(東洋経済新報社 1980円)