<第1回>下北沢って町は虫唾が走るんですよ
日本ハムファイターズの大ファンだった西村少年が聖地として崇めた「後楽園球場」に始まり、偏愛する大正期の私小説家・藤澤清造の終焉の地である「芝公園」まで34編29カ所の記憶が紡がれている。しかし、3年半に及んだ連載期間に、穴もポツポツと……。
「書くのが面倒だったんですよ、って言ったら怒られちゃうな(笑い)。どう言ったらいいんでしょう。えっとですね、基本的に、文芸誌の締め切りが終わった後に、この連載の締め切りがくるんです。文芸誌は毎月7日発売で、『小説現代』は毎月22日発売。どうにもこうにも小説を書き終わると燃え尽きちゃってるんですよ。同時期に書くならモチベーションみたいなものもそのまま保持できるんですが、ひと呼吸置いた後の締め切りだったので、この連載に気持ちが追い付かない月っていうのが多すぎて、落としちゃったんです。しかも、飛び飛びで落とすっていうふざけた真似を……。
それでも落とした直後に浅草や神保町といった自分の得意な町を取り上げたら、あまりに反省の色がないっていうんで、無理やり、自分に試練を課すつもりでアウェーの下北沢を選んだりしたんですが、いざ、書こうとすると書くことがないんですよね、これがまた」