南果歩から渡辺謙の“恨み節”は一度も聞いたことがない
この間、あるときは仕事先のホテルで、または豪邸で、南を直撃取材した。南のお母さんは南とうり二つで、ご高齢とは思えない若々しさを保っておられる。それで南と間違え、何度も声を掛けてしまった。
「娘に聞いてください」
そうおっしゃられて、「すみません」と頭を下げる。そんなこちらの不勉強にもかかわらず、南は取材に応じてくれるときはこちらと目をそらすことなく、質問内容をよく聞いて理解した上で返答してくれた。あるときは庭いじりが終わって、買い物に出かけた後で話してくれた。
そこに芯の強さというようなものが感じられた。今、目の前で起きてしまったことは自分のありようの結果だと潔く受け止めて、誰かのせいにしたりしない。渡辺謙とのことも、恨み節や悪口を聞いたことは一度もない。乳がんとのダブルパンチで、泣き崩れて、普通ならどうにかなってしまってもおかしくないような場面だったろうが、そういうところは一切見せず、気丈に振る舞ってきたし、今もそれは変わらない。まだ50代。新しい時代にもう一花咲かせてくれそうだ。
(聞き手=長昭彦/日刊ゲンダイ)