笑福亭松喬さんが落語家を決意した「初天神」の魅力語る

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 昭和36年生まれの私はラジオ世代で、中学生の頃は深夜ラジオが大人気。それで中学1年生のお正月、「ABCヤングリクエスト」(朝日放送ラジオ)の「仁鶴・頭のマッサージ」というコーナーだったかで「初天神」を聞いて落語家になりたいと思ったんです。

「初天神」というのは天満宮にお参りにいく父親と息子のやりとりの噺。縁日の賑やかな屋台の情景が目の前に広がって、息子が大きいどんぐり飴を「ペロペロ」じゃなく、「レロレロ」なめる、というのがすごい自然でリアルで。「うわ~落語ってスゴイやん!」って思ったんですね。

「初天神」で「面白い!!」と思ってからは一本やりでしたね。勉強してるフリして、カセットテープに一生懸命、落語を録音して繰り返し聞いていました。ラジオから流れてくる落語を、録音できるカセットを向かい合わせに置いて録ったりしてね。そんな時代でした。

 高校卒業したら、進学しないで落語家の道に行こうと思っていました。2年生の進路相談の段になって、担任の先生や親に話したら、案の定、オヤジに大反対されました。オヤジは製紙会社に勤めてました。当時の製紙会社は景気が良く、「おまえもサラリーマンになってタイムカードさえ押してれば、給料20万円もらえて人並みの生活を送れる」と。母親も反対で、「おまえが大成するなんて、東大行くより難しいからやめなさい」と言われました。

 担任の英語の先生までが私を諦めさせようと、「前任の学校の教え子で、落語家になって苦労してんのがおるから」と桂枝織(現・桂小枝)さんと引き合わせてくれました。枝織さんは先生に頼まれた手前、「この世界はしんどいで。三枝(現・桂文枝)も文珍も大学行ってるから、君もまずは大学行って、落語研究会で腕試ししたらどうや」と言うわけです。オヤジにも「20歳越えたら何も言わんけど、大学はどうしても行ってくれ」と言われ、それで結局、文珍さんと同じ大阪産業大学へ進みました。落語家で食べていけないかもしれないという葛藤はあったので、交通機械工学科を選んで自動車整備士の資格を取りましたね。

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