ウクライナの命運は…「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」は今だからこそ見るべき映画

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【寄稿】北島純(社会情報大学院大学特任教授) 

 2月24日、ロシアが遂にウクライナに侵攻した。プーチン大統領は、東部ドネツクとルガンスクの親露派地域を一方的に独立国家として承認した直後に、全面的な軍事作戦に踏み切った。20日に北京五輪が閉会し3月4日からパラリンピックが始まる間隙を縫うタイミングだ。雪解けによってウクライナの大地がぬかるみ陸上部隊の移動が困難になる前に、露軍が全土を蹂躙する可能性も指摘されている。

 ウクライナ側は徹底抗戦の構えを見せているが、開戦初頭で既に防空システムが制圧され、空港や港湾施設が破壊されたとの情報もある。侵攻に備えてキエフ市民が「木製銃」を手に軍事訓練を行っている報道に接して、先の太平洋戦争中に「竹やり」でB29に立ち向かおうとした姿を思い起こした人もいるかもしれない。軍事力の差は圧倒的で、プーチン大統領は核兵器の使用を匂わすブラフもかけている。バイデン米大統領はアフガン撤退時の混乱で批判を招いたばかりで、米国民の厭戦意識と国内経済動揺の恐れに引きずられ、経済制裁は繰り出すものの、EU諸国と同様に軍事介入に躊躇している。

 ウクライナの命運はどうなるのか──世界中が固唾をのんでいる今だからこそ見るべき映画がある。1932年から33年にかけてウクライナに地獄絵図をもたらした「大飢饉」(ホロドモール)を描いた「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」(アグニェシュカ・ホランド監督、2019年)だ。ホロドはウクライナ語で飢饉、モールは疫病を意味するが、少なくとも400万人が餓死・病死したとされるこの大飢饉は、ソ連の独裁者スターリンが推し進めた農場集団化(コルホーズ)と第1次5カ年計画を成功させるために必要な外貨獲得の手段としてウクライナから穀物を強制徴用した結果の人為的災害であるとされている。

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