「絵馬と脅迫状」久坂部羊著
「絵馬と脅迫状」久坂部羊著
木瀬の幼なじみの親友だった西条己一が、7年前に首吊り自殺をした。葬儀のとき、遺体の様子に、木瀬は絶句した。死の6日後に発見されたため、顔はうっ血してむくみ、全体が赤黒く変色している。爪が2ミリ半ほど伸びているのを見て、木瀬はいぶかしく感じた。10日前に会ったとき、己一は深爪なほど爪を切っていたからだ。彼はトルストイが貴族の青年として爪をきれいに整えていたというエピソードが気に入っていた。
木瀬はその後、神経内科医になったが、研修医として配属された塙亮二に会って驚いた。己一とうり二つだった。木瀬は塙に監視されているように感じた。(「爪の伸びた遺体」)
「病」をめぐる6編の短編小説集。 (幻冬舎 1870円)