是枝監督もハマった?「私のおじさん」は中高年男性の心に突き刺さるヒューマンドラマ
実際、ドンフンは生きづらい社会で重たい体を引きずって働き、「今世は失敗した」「現実が地獄だ」と嘆く。彼の兄弟も同じで「今世はダメだったが、来世では大成功して見返してやる」と本気で思っている。序盤は不器用に生きる人たちの憂鬱が描かれており気がめいるが、会社での出世争いや不倫が絡む中、ジアンだけがドンフンの心の叫びを知ることになり、見ているこっちも胸が痛む。
原題は「私のおじさん」。若いジアンがドンフンのことを“部長”ではなく、“アジョシ(おじさん)”と呼ぶ。日本人には違和感があるが、韓国では大人の男性に対して幅広く使われる。“アジョシ”に特別な感情を抱くジアンに切なさを覚えるものの、単なるラブストーリーとは一線を画している。
秀作だが、それでも安易にリメークしてほしいとは思わない。やはり日本と韓国社会は違うのだ。日本でのリメークは別の意味で泣けてくることが多い。