名女優・田中裕子の面目躍如! カンヌ2冠の是枝監督作品で魅せた圧巻の“怪物”的演技
先のカンヌ国際映画祭で脚本賞と「クィア・パルム賞」の2冠を達成した是枝裕和監督の「怪物」が、公開1カ月を過ぎても話題が途絶えない。
是枝監督にとっては定評のある子役たちの名演もさることながら、いずれ劣らぬ芸達者の中でも、物語のカギを握る人物を演じる女優の田中裕子(68)の存在感も語り草だ。
田中は最初、教師からの我が子への暴力を疑い学校へ乗り込んでいくシングルマザーの母(安藤サクラ)に対峙する校長先生として登場する。何を言われても、「ご意見は真摯に受け止め、今後より一層の……」とマニュアル通りの返答を繰り返すばかりで、事なかれ主義の権化のような役柄だ。映画批評家の前田有一氏はこう話す。
「ああいう役柄もやりすぎると、ともすれば漫画的になってしまいますが、リアリティーを失わないギリギリの演技で、視聴者の印象に強く残ります。さすが『おしん』から『寅さん』、そしてかつては濡れ場などもこなし、ありとあらゆる役をやってきたので、引き出しがたくさんあるんでしょうね」
そして物語が進むにつれて、校長が抱える秘密が明らかになっていく。