五木ひろしさんが西川きよし師匠と漫才を大熱演! 演歌の帝王は本職以外でも超一流だった
お会いしたのは30年近く前でしょうか。西川きよし師匠が司会の番組の中で、ゲストときよし師匠が5分程度のミニ漫才を披露する人気コーナーに五木さんが出ることになったのです。
この時代は「5分」がミニ漫才と呼ばれた頃で、4分で日本一を決める現在とは時間の感覚が違っていたのです。先輩作家と週替わりで書いていましたが、5週目以降は「もうみな(全部)本多君が書きー。ギャラ俺がもろとくさかい」と言われ、本来なら「ギャラだけとるんかえ!」とかツッコむべきでしたが、うれしさが先立ち、ツッコミを忘れつつ、五木さんの仕事も喜んで書いていました。
ご本人と事前の打ち合わせができなかったので「全日本歌謡選手権」で10週勝ち抜いて“五木ひろし”になる前と後を調べに図書館に行って資料をコピーしたり、話し方のクセや特徴をつかむために五木さんの番組を片っぱしから録画して見直しました。
そして迎えた収録の日、きよし師匠に連れられて五木さんの楽屋へご挨拶に伺うと「面白い台本ありがとうございました。正直どんな台本が来るんだろうってちょっと不安だったんですよ。それが読んでみたらスラスラ。一度もお会いしたことがないのによく僕の特徴をつかんでますね~!僕の言いそうな言葉やセリフだのの連続だから、すぐ覚えましたもん。やっぱりその道のプロは違いますね、本当にありがとうございました」と深々と頭を下げられました。するときよし師匠が、「何を言うたはりまんねん五木さん! 阪神巨人、いくよくるよ、全部彼が書いてるんですよ!今、日本で一番おもろいネタ書く漫才作家でっせ! なぁ~本多君!」と。思いもしなかったきよし師匠の言葉に「そんなそんな」と汗をかきながら頭を下げるだけでしたが、この言葉がこれから後の作家活動の励みと支えになっています。