小林聡美さんが表現者として「年を重ねる」とは… 《等身大》と呼ばれることへのちょっとした反発も
小林聡美(俳優)
今年だけでも、エッセー出版、初の音楽コンサート開催、出演映画公開が控えるなど八面六臂の活躍を見せている。先月から小泉今日子さんとのダブル主演ドラマ「団地のふたり」が放送中。団地を舞台に幼馴染みとの何げない日常を描く作品だ。語られずとも感じられる演技力、「このままでいい」をよしとしないスタンス。フィールドにこだわらない活躍の原動力は何なのか。表現者としての思いとともに聞いた。
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──「団地のふたり」では訳あって団地に戻ってきた桜井奈津子を演じています。バックグラウンドが細かく描かれていない役を演じる際、どうやって役づくりしていますか。
そんなにはっきりと人物像をイメージして準備はしませんね。自分で理屈を付けて考えようとしても、とても難しいことですし、結局は自分がこれまでどうやって過ごしてきたかが自然とにじみ出てしまう。それが俳優という仕事だと思っています。もちろん、ヒントは台本の中に詰まっていますが、衣装を身につけ、撮影セットに入れば、その人物の肌触りが自然と感じられる。そういう勘を信じています。演じるのは俳優ですが、現場には監督やプロデューサーがいる。ドラマや映画はどのように見せていくのか総合的に形にしていくもので、俳優1人だけの力ではなく、チームとしてつくり上げる最たるものだと思っています。
──演技で工夫していることは?
台本など、字面で見ると深刻すぎたり、センチすぎたりするところを、あえて軽く言うことで良いシーンになるのではないか、とか。音の響き的な部分で伝えられるところを探ってみたり、共演者同士で試してみたりすることはあります。同じセリフでも声のトーンで伝わり方が異なってきますからね。
──演技や役柄が等身大だと言われますよね。
そう言われるとむしろ、「私の等身を知っているのか?」と逆に聞きたくなりますね。役はあくまでも役であって、本当の私ではありませんし、多少のギャップはあります。もっとも、私の元々の性格として、派手な表現をするのが得意ではないので、飾らない等身大というふうに言っていただいているのかもしれません。
──なかでも印象に残る役や作品というと?
出演した作品を見返すことはめったにありません。ただ、映画「かもめ食堂」は初めてちゃんとした“二枚目”を演じた気がします。アドリブで盛り上げるわけでもなく、余計なことをしなくていいんだな、と思いました。そこから新しい流れができたのかな、という感覚があります。ドラマ「やっぱり猫が好き」で私のことを知ってくれた方は多い。当時のテレビは勢いがあって、いろいろと面白いことが実験できた良い時代。うまくそのタイミングに乗れたのかなと思います。
■書き続けるコツは責任を持たないこと
──日常をつづったエッセーも人気ですが、執筆活動で心掛けていることはありますか。
無責任に聞こえるかもしれませんが、書くものにあまり責任を持たないことですね。あれこれ難しく考えると書けなくなるので、「どうせ誰も読んでいない」ぐらいの勢いで書く方が私には合っています。取り上げるエピソードについても、何人かには共感してもらえたらいいな、という話題を考えて拾っています。連載などで今月は書くことがないなと思っても、「あの出来事を見方を変えたらエッセーに書けるかも」と、日常の引っ掛かりをいかに面白がられるかだと思うんです。やっぱり私自身が面白がれないと書けないし、伝えられませんから。