今度の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」は“残酷コメディー”仕立て NHKらしくない見どころ
■武士道が固まる前の乱世を描く
ドラマはその義時の立身出世の物語だが、権力を握るためには手段を選ばなかった。謀略を仕掛けて比企一族、和田一族らライバル宿老を次々と攻め滅ぼし、姉の北条政子をとことん利用して入浴中の将軍を暗殺。父親も伊豆の辺地に幽閉し、朝敵とされると逆に天皇・上皇を攻めて島流しにしてしまう。毒殺、斬殺、リンチなんでもありで、ドラマの見せどころのひとつはその殺害シーンだ。
「当時はまだ武士道なんてなくて、切腹も慣例になっていません。ただただ、先に相手を殺した方が勝ちなんです。義時はそうやって生き残ったわけで、ドラマとしたらかなり陰惨で暗い。殺害シーンも血なまぐさくリアルに描かれます。でも、そればっかりでは大河としてはおぞましすぎるので、三谷脚本は北条一家のファミリードラマにしたり、失恋エピソードを加えて、“残酷なコメディー”という仕立てになっているようです」(テレビ雑誌編集デスク)
セリフも現代語や現代語調が多用され、小栗旬の義時が「ねえ、もう戦やめようよ~」とか、大泉洋の頼朝が「ごめん。ちょっといいかな」なんてしゃべったりするらしい。小栗はドラマ「信長協奏曲」(2014年)で、高校生がタイムスリップして入れ替わる織田信長を演じていて、このときも高校生言葉の信長だった。時代劇ファンからはクレームが付きそうだが、「ござる」「奉り候」「大儀である」というようなセリフばかりより、なんだか本当っぽいから不思議だ。
物語の舞台は鎌倉や伊豆と東京からごく近い。ゆかりの地めぐりに、ドッと観光客が押し掛けそうである。
(コラムニスト・海原かみな)