500万人が悩む「便失禁」 保険で症状を改善できる
「しかし、実際に多いのは、これらの異常がない健康な人の便失禁。高齢者はその傾向が強い。加齢による肛門括約筋の衰え、肛門の感覚や直腸の便意の感覚の低下などが考えられます」
切迫性、漏出性どちらにも共通した治療法は、「便を整える」こと。
「夜は水分や酒を控える、食物繊維の摂取を心掛ける、適度な運動をする、便意を感じたらすぐにトイレに行くなど、排便に関する生活習慣を見直してもらいます」
尿道、肛門、膣を締めたり緩めたりする骨盤底筋体操も行うが、一般的には、これだけでよくなる患者は少ない。そこで、下痢止め効果のあるロペラミドと、便の硬さを調整するポリカルボフィルカルシウムの2種類の薬を用いた治療が行われる。
「さらに、切迫性便失禁は、筋電図のセンサーをおしりに刺し、モニターを見ながら骨盤底筋を鍛える『バイオフィードバック療法』を行います」
■欧米では20年前から行われている。「仙骨神経刺激療法」
これらによって便失禁が改善するのは、6~7割。治療成績を上げるため、これまで欧米を中心に、足の筋肉を肛門に巻きつけて電気で刺激する治療法や、人工的な肛門括約筋を用いた治療法など、さまざまな試みが行われた。しかし、どれも有効性にバラつきがあり合併症もあるなどの理由で、日本で行われることはなかった。