【うつ病】会社という組織がなければ病気と闘えなかった
かつて「心の風邪」などと軽く扱われてきたうつ病。その後、薬剤投与など医療による根治療法がないことが分かり、治療は混迷している。いまのところ最良の治療は時間をかけることで、「自然治癒」こそが理想だ。
東京・板橋区内に住む越川正則さん(仮名・62歳=人材派遣会社顧問)も、10年前に「東京医科歯科大学付属病院」(御茶ノ水)で診察を受けたとき、担当医から「治るまで数年は覚悟して。ただ焦ることなく、自分で脱出する糸口を見つけてください」とアドバイスを受けた。
結局、数年どころか、症状が目に見えて良くなった今年の春先まで、ほぼ10年の歳月が流れた。この間、症状として「不眠」に続いて「食欲」も失った。独身の越川さんは手料理が自慢で、フランス料理にも挑戦していた。だが、その料理作りが面倒になる。ごはんすら炊かなくなった。
朝方、眠れないまま起きてテーブルの前に座るが、何か食べようという気が起こらない。コンビニで購入した弁当を無理に食べようとしたが、半分も食べないうちに、顔から汗が噴き出した。
夜、テレビを見ながらビールを飲んでみても、味がない。好きだったサケのおにぎりを食べても同じである。