【糖尿病】「餃子にビールをやめるのは人間やめろと同じ」
藤田さんは、糖尿病の飲み薬こそ服用したが、主治医と約束した「食事療法」は無視したという。
守れなかった理由はもう一つあった。藤田さんは、自宅に妻と大学に通う息子を残し、関東圏の工場に単身赴任中だったのだ。一応、主治医からもらった食品カロリー表を社員寮の冷蔵庫のドアに張り付けてはいた。だが、ひとりで暮らす藤田さんが作る朝食や夕食は適当だったし、社員食堂の昼食も糖尿病患者に向いていない。
「主治医から、『そんなときは、ご飯を半分残してください』と言われましたが、とても守れません。酒も少なめにというアドバイスも、部下との酒席では実践できませんでした」
毎月の「血液検査」(約6000円。1カ月分の医薬品を含む)で、藤田さんは糖尿病の目安とされる「ヘモグロビンエーワンシー」(HbA1c)が8.8%(正常値6.5%未満)、「空腹時血糖」は160mg/dl(正常値110mg/dl未満)もあった。
定年を迎える60歳まで、両方の数値は高止まりのまま。主治医からは「藤田さん、そのうち失明しますよ。定年退職したのですから、奥さんに協力してもらって食事療法を真剣に考えてください」と再三勧告されていた。
定年後、奥さんが食事療法のパンフレットを参考にして、1日3食(1800キロカロリー)のメニューを作った。半年ほどして藤田さんのHbA1cは7.2まで落ち、正常値に近くなる。気をよくした藤田さんは、さらに「運動療法」にも着手する。