多発性骨髄腫には治療をせずに経過観察で済むタイプがある
YさんとCさんは同じ多発性骨髄腫でしたが、その種類が異なっていました。血液の中には「免疫グロブリン」というタンパクが存在します。これはウイルスや細菌などの異物(抗原)が体内に侵入した時に排除するためにつくられる物質(抗体)で、体を守る大切な“武器”です。形質細胞は免疫グロブリンをつくる役割がありますが、形質細胞が腫瘍化すると役に立たない異常なタンパクをつくってしまいます。これが「Mタンパク」です。
腫瘍化した形質細胞は骨を破壊して折れやすくし(溶骨病変)、骨髄では血がつくれなくなり(貧血)ます。さらにMタンパクが増えて、血液中で過粘稠度症候群、腎不全、高カルシウム血症などを起こす「症候性骨髄腫」(Yさんはこの病気でした)になると、全身化学療法による治療が必要です。また、感染にも弱くなります。
一方、異常タンパクのみでタンパク量も少なく増加しない「無症候性骨髄腫」の場合(Cさんがこちらの種類でした)、多くは無治療で経過観察となるのです。
発病の年齢にはばらつきがありますが、50~60代に多くみられます。タンパク電気泳動や免疫電気泳動によるMタンパクの有無、尿タンパク検査、骨髄検査、全身骨X線や全身CT検査による骨髄以外の病変の有無などで診断します。