「薬をやめたくない」患者の希望とどう向き合うべきか
たとえば、新しい抗がん剤(免疫チェックポイント阻害剤)の「オプジーボ」や「キイトルーダ」は非常に高額で、前者は年間約1700万円(体重60キロの場合)、後者は年間約1400万円かかります。ただ、高額療養費制度によって患者が実際に求められるのは月8万円程度です。その差額は、国民が負担した医療保険料と税金で賄われます。
どちらの薬も、肺がんや悪性黒色腫(皮膚がん)で使用する場合、“最後の切り札”に近い状態で使われます。しかし、抗がん剤は徐々に効果が弱くなることがあります。これらの薬の効き目が悪くなった時、患者や家族は「もうやめてください」と言えるでしょうか? そして、患者が「やめたくない」と希望しているのに、医師は中止を決断できるでしょうか?
それ以上の効果が望めない状況で薬を続けるのは、治療的にも医療経済的にも適正使用とはいえません。しかし、患者の“気持ち”は別問題といえます。「薬をやめられない」というのは、医療が抱える難しい問題のひとつなのです。