著者のコラム一覧
名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

ディオバン事件と東大 かっけ予防の教訓は生かされているのか

公開日: 更新日:

 ディオバン事件についての記述の最後に、慈恵医大を設立した高木兼寛らの研究結果を無視し続け、かっけの予防を最後まで邪魔した東大が、この事件にどのようにかかわったかをまとめておきたいと思います。

 ディオバンにまつわるデータねつ造は、日本循環器学会の追及により明らかになった面が大きいのですが、当時の学会代表理事は、東大の元循環器内科教授、そして名誉教授、私の母校でもある自治医科大学の学長でした。さらにはその門下である東大の循環器内科医師が、日本循環器学会誌に掲載された京都府立医大の論文の血清ナトリウムやカリウムの値がありえないような数字になっていることを指摘しました。このことが事件の解明の大きなきっかけになりました。

 このように東大のグループが事件解明に大きな役割を果たしています。高木兼寛の業績は、自らが設立した慈恵医大で軽視され、むしろ東大において報われたという皮肉な結果といえるかもしれません。

 しかし事態は複雑です。千葉大においてディオバン事件にかかわった教授は、その後大阪大学を経て東大の循環器内科の教授になり、今は日本循環器学会の代表理事です。東大の一部においてかっけの論争は生かされているかもしれませんが、その王道はまだまだ論理重視の暗黒時代です。千葉大時代の論文こそ撤回されたものの、この教授は、ディオバン事件に対する自らのかかわりについて、説明責任を果たしているとは思えません。それに対し東大は何ら行動を起こしているようには見えないのです。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    佐々木朗希を徹底解剖する!掛け値なしの評価は? あまり知られていない私生活は?

  2. 2

    江藤拓農水相が石破政権の最初の更迭大臣に?「隅々まで読んだ」はずの食糧法めぐり“逆ギレ誤答弁”連発

  3. 3

    「相棒」芹沢刑事役の山中崇史さんが振り返る俳優人生…地下鉄サリン事件「忘れられない」

  4. 4

    吉幾三(5)「お前のせいで俺と新沼謙治の仕事が減った」

  5. 5

    みのもんたさんが自身のスキャンダルで見せた“類まれな対応力”…明石家さんま、石田純一との共通点

  1. 6

    巨人今季3度目の同一カード3連敗…次第に強まる二岡ヘッドへの風当たり

  2. 7

    大阪・関西万博もう間に合わず? 工事未完を「逆転の発想」で楽しむ方法…識者が皮肉たっぷり提唱

  3. 8

    日本代表FW古橋亨梧の新天地は仏1部レンヌに!それでも森保ジャパン復帰が絶望的なワケ

  4. 9

    維新は予算案賛成で万々歳のはずが…ゴタゴタ続きで崩壊へ秒読み 衆院通過の自民はニンマリ?

  5. 10

    松坂桃李「御上先生」第7話2ケタでV字回復へ 詩森ろばの“考えさせる脚本・演出”はTBS日曜劇場からの挑戦状