ディオバン事件と東大 かっけ予防の教訓は生かされているのか
ディオバン事件についての記述の最後に、慈恵医大を設立した高木兼寛らの研究結果を無視し続け、かっけの予防を最後まで邪魔した東大が、この事件にどのようにかかわったかをまとめておきたいと思います。
ディオバンにまつわるデータねつ造は、日本循環器学会の追及により明らかになった面が大きいのですが、当時の学会代表理事は、東大の元循環器内科教授、そして名誉教授、私の母校でもある自治医科大学の学長でした。さらにはその門下である東大の循環器内科医師が、日本循環器学会誌に掲載された京都府立医大の論文の血清ナトリウムやカリウムの値がありえないような数字になっていることを指摘しました。このことが事件の解明の大きなきっかけになりました。
このように東大のグループが事件解明に大きな役割を果たしています。高木兼寛の業績は、自らが設立した慈恵医大で軽視され、むしろ東大において報われたという皮肉な結果といえるかもしれません。
しかし事態は複雑です。千葉大においてディオバン事件にかかわった教授は、その後大阪大学を経て東大の循環器内科の教授になり、今は日本循環器学会の代表理事です。東大の一部においてかっけの論争は生かされているかもしれませんが、その王道はまだまだ論理重視の暗黒時代です。千葉大時代の論文こそ撤回されたものの、この教授は、ディオバン事件に対する自らのかかわりについて、説明責任を果たしているとは思えません。それに対し東大は何ら行動を起こしているようには見えないのです。