近年最も注意している2つの耐性菌「MRSA」と「VRE」
傷口での院内感染を引き起こす原因の100%近くがMRSAといわれていて、感染すれば確実に創部感染に拡大します。閉じたはずの傷口が開いてしまって膿を持ち、敗血症を起こして3分の1が亡くなってしまうほど深刻な感染症です。心臓外科領域でも過去に数多くの施設で悲惨なアウトブレークを経験してきました。
VREは、MRSAの治療に使われる特効薬である抗生物質バンコマイシンに対して耐性を持つ腸球菌です。バンコマイシンだけでなく、現在、細菌感染症の治療に使われているほぼすべての抗生物質が効かないので、感染症を起こすと命取りになる危険が高いといえます。
腸球菌は、腸や生殖器に常在していて、ほとんどすべての人が持っています。こちらも通常は無害ですが、抵抗力が落ちている人が感染すると、腎盂腎炎、腹膜炎、敗血症、心内膜炎などを起こし、本来の特効薬であるバンコマイシンが効かないので重篤化して命を落とす可能性が高いのです。
■院内感染が拡大してしまうと命取りに
MRSAもVREも、症状が表れていない保菌者は少なくありません。特にVREは排泄物から伝染するのでMRSAの40倍もうつりやすく、院内感染を起こしやすいのです。