専門医であればこそ、せめて患者と一緒に悩んで考えてほしかった
Sさんは、これからも治療を受けたいこと、Y病院に通院しても構わないことも訴えてみました。しかし、「そろそろ治療をやめて自分らしく生きることを考えたらどうでしょう」との答えでした。その言葉を聞き、「治療をやめて、自分らしく生きるなんてできない」と思って再度治療したい旨を伝えましたが、「無理です」と言われ、それ以上は考えてもらえなかったそうです。
そんな結果をSさんから聞いたG病院のT医師は、こんなことを考えたといいます。
「標準治療そして専門医は多くの患者に幸せをもたらすが、治療を受けたい患者を切り捨てることになる場合もある。標準治療が効かなくなった患者を、どうしたら救えるのか。新薬がなければ、いまの薬の投与法を変えたり、放射線治療を工夫して行う臨床試験などはないだろうか? ゆくゆくは、それが標準治療になって患者を救えることになるかもしれない。治療を熱望しているSさんは体も元気だし、何とかしてあげたい。専門医であればこそ、せめて患者と一緒に悩んで考えてほしかった」
Sさんは、親戚から民間の免疫療法を勧められたそうですが、T医師は「高額で認可されてもいない免疫療法は勧めたくはない」と答えました。 セカンドオピニオンでよい助言が得られなかったSさんとT医師は、一緒に悩みながらこれまでの治療を振り返り、次の治療は「がんを抑える可能性が残っていると思われる2年前に行った治療法」をもう一度行うことを選択しました。
たとえ「専門医」でなくても、患者さんにとって信頼できる医師はたくさんいるのです。