3度のがんと闘いながら亡くなる直前まで前向きに生きた
「ラジオ波熱凝固療法が難しくなると、担当の先生が動脈化学塞栓療法を行っている病院を紹介してくれて、そこで何回も治療を受けました。それでも、夫は決して弱音を吐くことはありませんでした。いつも前向きでしたし、生きる望みを持っていました。仕事も一生懸命に続けていて、倒れた日も出勤していました。ですから、末期的な状態とはいえ、今回はあまりにも突然のことでした」
Mさんのご主人が亡くなった後、担当医から解剖の依頼があり、「解剖によって、もし、これから同じ病気の方が同じ状態になった時には、どうすればいいかのヒントが得られます。必ず次の方の治療に役立ちます。このまま火葬してしまえば分からなくなることもたくさんあるのです」と説明されたといいます。
「担当の先生は、長い間どんなことでも相談にのってくれました。一緒に悩み、いろいろ治療法を探し、見通しは暗いのに希望を持たせてくれたのです。夫がとても信頼していた先生の役に立つのであれば、要望に応えられることができるならと思い、すぐに解剖を承諾しました」
Mさんは泣き出しそうになりながら一気に話され、それでも、最後は少し笑顔が見られました。急に夫を失ったMさんには、大変な悲しみの中でも病院や担当医に対する感謝の気持ちがあり、それがわずかでも悲しみを和らげてくれているのではないかと思いました。