著者のコラム一覧
和田秀樹精神科医

1960年6月、大阪府出身。85年に東京大学医学部を卒業。精神科医。東大病院精神神経科助手、米カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。著書多数。「80歳の壁」(幻冬舎、税込み990円)は現在、50万部のベストセラーに。最新刊「70歳の正解」(同)も好評発売中。

「危ないから」「病気だから」と行動を制限してはいけない

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 遊びのシーンではどうか。ドライバーの飛距離が200ヤードから180ヤードになったとしても、スコアは格段に落ちただろうか。経験で培った小技でスコアをまとめてゴルフを楽しむことは可能である。「まだできること」に目を向けることで仕事の質、遊びの楽しみは維持できるのだ。

 もちろん一般的な加齢による老化現象と認知症を同列に論じることはできない。40代から60代に起こる意欲低下は脳の前頭葉の萎縮によって起こるものだが、認知症の場合はそれに加えて脳の海馬の萎縮→記憶障害、側頭葉の萎縮↓理解力の障害、頭頂葉の萎縮↓失見当識が起こる。この失見当識とは認知症の主たる症状で、いまの自分を取り巻く時間、場所、人、状況などを正しく認識できなくなる状態のことである。

 だが、悲観する必要はない。

「失った力を求めず、残存能力をできるだけ長く維持する」。これが人生の後半を生きる人間に求められるスタイルだ。認知症の親に対しても「認知症になったからもうダメ」ではなく、「認知症でもできることはたくさんある」とポジティブに考えることだ。「認知症だから」と、親の行動を制限してしまうことがいちばんいけない。認知症の症状を完全に治すことはできないが、脳を使い続けることで萎縮の進行を抑えることは可能だと考えるべきだ。

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