<9>一緒にがんを勉強する いまは患者が医療を選ぶ時代
佳江さんの勉強の対象は、がんに限ったものではない。一般の市販薬についても、熱心に本を読んでいたという。
「僕が風邪をひいたとき、普通に風邪薬を手にとったところ、『風邪を根本的に治す薬はない』と説明されました。解熱剤や咳止めなど対症療法の薬はありますが、せっかく体が体温を上げてウイルスを排除しようとしているのに、それを邪魔してしまったら、体はちっともよくならない。だから僕は葛根湯を飲むようになった。とはいえ、熱が出たら飲んでも構いませんよ。ただし、がんに関してはやっぱり命に関わる病気ですし、単に生きるか死ぬかだけではなく、いわゆるQOL(生活の質)にも関わってきます。ですから、『先生のおっしゃることでお願いします』というのではなく、自分たちで勉強しなくてはいけないと思うのです」
佳江さんは実の父もがんで亡くしている。
「ご両親は彼女が10歳ぐらいのときに離婚されていて、僕と出会い、結婚を報告しようとしたら、がんで亡くなっていたことが分かりました。だから、自分ががんで死んでも仕方ないという気持ちが心のどこかにあったのかもしれません。決して、生きることに熱心じゃなかったわけではない。とても勇気があったとしか言いようがありません」 =つづく