<8>「闘病」と言わない 病気を受け入れる心境に達していた
小宮さんは、妻の病について、“闘病”という言葉を使わなかった。
「このことはお互いに話し合っていたわけではありませんが、彼女自身が“闘病”という言葉を使っていませんでした。“病と闘う”ということは、治るということが前提であって、妻は早くから、病気から逃れるのではなく、病気を受け入れようという心境に達していたのだと思います。仮に乳房を取ったとしても、がんが消えるわけではないと私たちは考えていました。もともと、がんは体のどこかから飛んできたのかもしれませんし、早期発見とはいえ、がん化するまでに、かなりの時間が経過しているはずです」
だが、佳江さんはすぐにこの境地に至ったのではなく、もがき苦しんでいた跡もある。小宮さんの著書「猫女房」(秀和システム)にそのメモの一部がある。
《私が必要であると納得すれば、手術(温存でも、切除でも)することは、かまわないということ、そのほかの治療も同様であること。決して単純にいやだと言うつもりはない》
《5年生存率、10年生存率とは何か?ガン以外の死亡は含んでいるのか?私は10年80%。生存というのは寝たきり、副作用、がんの症状で苦しんでいても生存ということになる》