「医師の思い」と「患者の思い」は対等ではない現実がある
肺がんの治療を行っている、農業を営むCさん(58歳・女性)との診察室での会話です。
「お元気そうですね。採血の結果も悪くないですよ」
「先生、私は先生の前では元気そうにしているけど、家に帰ったら本当はぐったりなの。主人からは『そんなにぐったりしているなら、抗がん剤を飲まないで休んでみたら?』と言われるんです。でも、治療を止めたら病気は進むのでしょう?」
「ちょうどこれから2週間、休薬期間に入りますから、その間どうだったか教えてください。だるさはどうか、食事はどうか、手帳にでも付けてみてください」
「ありがとうございます。そうします。久しぶりに街に出たら、世の中、みんな元気な人ばかり。羨ましいわ」
「元気そうに見えても、それなりに病気を抱えている方もおられるのですよ」
スーパーの支店長を務めるSさん(45歳・男性)は、胃がん手術1年後に、腹腔内のリンパ節転移が出現して再発、抗がん剤の点滴と内服治療を行いました。約半年でリンパ節転移は消え、抗がん剤治療は内服のみとなり、それから2年間、再発はありません。