「人生会議」の決定を逆転させるくらい医療は進歩している
息子が病院を訪ねると、担当医は熱心に説明してくれたといいます。
「遺伝子検査でBさんに合った薬があって、効く可能性が非常に高いのです。肺がんの治療は10年前の5年生存率は数%だったのが、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬が加わって、いまはその何倍にも増えています。治ったと思われる患者もいます」
息子は「そんなに効く可能性が高いなら治療したい」と思って、Bさんの姉に相談しました。すると、姉は「あなたは一緒に暮らしていないからそんなことを言うが、私は『薬の治療はしない』と妹が話しているのをずっと聞いてきました。絶対、反対です」と、一生懸命に説明しても聞く耳を持ってくれませんでした。
それでも、息子は「ボケてしまっても、あんなに元気だ。母に効く薬があるなら治療して長く生きていて欲しい」と思ってG医師に相談しました。それを受けたG医師は、Bさん本人が書いた「抗がん剤は使わない」という確認書もあり、これは「どうしたものか?」と悩むことになったのです。
自分で意思決定が出来なくなった場合に備えての「人生会議」、しかし最近のがん医療は「人生会議の決定」を逆転させうる――。それほど急激に大きく進歩していると思うのです。