「3カ月の休職」はサラリーマンには“百害あって”一利なし

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 働き方改革では、いま懸命に残業を減らしているが、過労ではなく、休み続けることでうつが発生するリスクもあると井原医師は説く。「休めばうつは治る」というこの固定観念に、実は問題がある。さらには、うつ病患者がよく指示される「3カ月程度の休職」は、長すぎてそれ自体が二次災害的にうつを悪化させ、サラリーマンのキャリアに深刻な影響を及ぼすことすらあるというのが、井原医師の持論なのだ。

「休むことで得られる利益はたちまち頭打ちになり、逆に損失は日に日に大きくなる。あるポイントで損益が逆転します。その前に復職させないと悪化の一途をたどる。そのポイントは3カ月なんかじゃない。もっと早いはず」

 精神科や心療内科ではサラリーマンがうつ病と診断されると、「3カ月の休職を要する」という診断書が出されるケースが多くある。診断書を会社に提出し、3カ月の間、自宅で休んでもうつ病が回復しないと、さらに3カ月の休職延長がなされる。この「3の倍数の休職」が、日本経済に多大な損失を与えていると、井原医師は警鐘を鳴らす。


「厚労省の研究班によると、うつ病で休職した社員の約半数が復帰後に病気休暇を再取得したとある。これをもってこの研究班は、復職をもっと慎重にせよと主張しているのですが、それはとんでもない誤りです。慎重にすべきなのは、復職じゃなく、最初の休職のほう。長く休ませても、うつが回復しないのなら、百害あって一利なし。休職をもっと短くするか、最初からしないかでしょう」

 それでは、うつ病になってしまった会社員は、休職以外のどのような手段で回復を目指せばいいのだろうか。井原医師は、「働きながら回復する」治療スタイルを提言する。

(フリージャーナリスト・里中高志)

【連載】休職させない精神科医療

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