【鳥の唐揚げ】鶏肉のカルノシンで体の酸化や糖化を抑える
消化によく、香味や風味やビタミン類が付与される
でんぷんやタンパク質は重要な栄養素であるにもかかわらず、そのまま食べても味がしない。一方、でんぷんが分解してできる糖分には甘味があり、タンパク質が分解してできるアミノ酸にはうま味がある。私にはこの事実が長年の謎であった。
生物にとって、味覚は食物の存在や良否を探るために発達した感覚のはずなのに、なぜ本体ではなく分解産物の方に魅力を感じるよう進化したのだろうか、と。
仮説のひとつは、大昔、ヒトの祖先は自然界で天然の発酵食品に出合い、それが生存のためにも、健康のためにも役に立つことを体験したから、というもの。おいしさの起源は、それが生きるために有用だったからである。
さて、発酵は微生物の力によって生じる。コウジカビはその代表選手。米、豆、小麦などに生えると、強力な酵素群を分泌して、でんぷんやタンパク質をたちまち分解し、糖分やアミノ酸に変えてくれる。
分解が進んだ食材は消化にもよいし、微生物がつくり出した香味や風味、あるいはビタミン類が付与されるというメリットもある。以来、ヒトは自然に学んだ方法を積極的に利用することに気付き、食品の味を開くことを覚えた。これが発酵食品として世界各地の食文化を築いた。麹はその典型例である。
▽福岡伸一(ふくおか・しんいち) 1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。
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