【さわらの卵黄焼き】動脈硬化に糖尿病予防…昔から重宝された理由
制がんや抗酸化作用がある究極の健康スローフード
私は米国で長らく研究生活をしていた。実験に忙しいので、どうしても食事はアメリカンなファストフードになってしまう。ピザ、ハンバーガー、フライドチキン……これにコカ・コーラが恐ろしいまでに合う。肥満になるのも当たり前。
しかし、日本人である私はときどきどうしても恋しくなる味があった。それは味噌汁や味噌ラーメンの味。味覚とは記憶。子ども時代に慣れ親しんだ味がおいしい味である。
ことほどさように味噌は日本人の食文化に深く根ざした画期的な発酵食品である。大豆、米、麦などを原料に麹の力を借りて発酵させる。発酵とはデンプンやタンパク質の分解作用であり、これによって糖質の甘味やアミノ酸のうま味が花開く。また、麹菌がつくる脂肪酸やイソフラボン化合物は制がん作用がある。さらに味噌を特徴づけるあの褐色はメイラード反応(糖とアミノ酸の結合。カステラの焦げ目と同じ)によるもので、反応物には抗酸化作用がある。つまり、ゆっくり熟成される味噌は究極の健康スローフードなのだ。
唯一の考慮点は、味噌にたっぷり塩分が使われていること。味噌味にインパクトを求めすぎると塩分過多になる。ただし、本メニューのように、そこへ別の形でうま味が加わると、味噌を少なめにしても、おいしさは変わらない。今では、ミソスープやミソラーメンは米国でも大ブーム。
▽ふくおか・しんいち 1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。
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