終末期の父親が震える手で3人の子供たちに書き残した言葉
Mさんは子供が出てくる詩をたくさん作って毎日送ってくれたのです。Hさんはどれだけ心が安らぎ、励まされたことでしょう。
■がんが進行しても希望を失わなかった
われわれはがんとも抗がん剤とも告げずに治療をしました。それでも、Hさんは私を信頼してくださり、頑張りました。「先生、私が元気になったら、もしできたら一緒に病院をやりたいね。一緒に病院を!」
がんが進行していても希望を失っていませんでした。奥さんは毎日毎日、付きっきりでした。正月はなんとか自宅で過ごすことができました。しかし、すぐに息が苦しくて横になることができず座位のままで過ごすようになり、とうとう気管切開をすることになりました。言葉が出しにくくなることから、Hさんは3人のお子さんあてに、震える手でこんな言葉を書き記しました。
「父はこんなに頑張った、あなたたちの人生を頑張れ!」
つらいつらい日々をすごし、3月3日に亡くなりました。Hさんが亡くなってから、奥さんはどれほど苦労され、頑張ってこられたか。大変であったと思います。3人のお子さんを立派に育てられ、そして頼もしい8人のお孫さんがここにおられます。心は、魂は引き継がれる――。本当にそう思いました。