終末期の父親が震える手で3人の子供たちに書き残した言葉
Hさん(男性=当時51歳)が亡くなられて今年で三十三回忌を迎え、奥さんと集まった8人のお孫さんで一緒に撮った写真が、担当医だった私の元に送られてきました。
お孫さんたちの背丈は奥さんと同じかもっと大きく、高校生か大学生かそれ以上か、皆さんとても頼もしく見えました。奥さんをはじめ、皆さんニコニコされています。 Hさんが生きておられた頃、8人はこの世に存在していません。写真を見て私は「Hさんの心の思い、魂が、33年たって孫たちに継承されている」と思いました。
Hさんはバリバリ仕事ができる方で、職場のみんなから信頼され、尊敬されていました。ある年、胃の調子が悪くなって7月末に某病院で検査を受け、かねて予定していた黒四ダムへの家族旅行の後に入院しました。
8月20日に受けた開腹手術では、胃がんは手の施しようもなく広がっていました。当時は本人に病名は告知されていません。その後、がんは肺に進んで呼吸が苦しくなり、9月末には胸水がたまった状態になり「胸膜炎」という診断で私が勤めていた病院に転院されました。胃がんなのに「お腹が痛い」のではなく、多数の肺転移があってがん性胸膜炎で呼吸困難に苦しまれたのです。