耳鼻科専門医が警告 あなたの「副鼻腔炎」が治りづらい理由
「上顎洞は左右の頬の内側、篩骨洞は左右の目の間の奥、その上に前頭洞があり、篩骨洞の奥の方に蝶形骨洞があります。それぞれの内部は空洞で、空気が入っており、薄い粘膜がついた骨に囲まれています。粘膜にはびっしりせん毛が生えていて、異物を排除する働きがあります。こうした構造になっているのは頭部を軽くしたり打撲時の衝撃をやわらげるためです」
副鼻腔のなかで歯との関係が強いといわれているのが上顎洞だ。上歯の根の先が上顎洞に近いため、歯及び歯周組織の炎症が容易に上顎洞に移行する。とくに小臼歯、大臼歯の虫歯や歯ぎしりなどの物理的刺激から歯髄が感染し、その炎症が上顎洞の洞底を浸潤していくと上顎洞粘膜に炎症が広がり上顎洞炎を併発する。これが放置され、慢性副鼻腔炎になるという。
「歯が原因の副鼻腔炎は医学の教科書にも載っていて歯原性副鼻腔炎と呼ばれています。歯原性副鼻腔炎の症例報告は数多く発表されていて、その頻度は慢性副鼻腔炎の1割程度とされています。しかし、それは歯科や耳鼻科で単純X線写真が診断に使われていた時代の話です。単純X線では粘膜の腫れなどを詳細に見ることはできませんでしたが、いまは被曝量の低い歯科・耳鼻科専用CTが開発され、粘膜を含めた鼻の状態と歯や上顎骨の状態が同時にハッキリとわかります。それで見ると患者さんに自覚がないものを含めると歯原性副鼻腔炎はかなり多い。欧米では慢性副鼻腔炎の原因の6~8割は歯原性との報告もあり、私の患者さんの過去のCT画像を調べてみると、上顎洞、篩骨洞に炎症がある患者さんの上歯に何かしら問題がある方が予想以上に多かったのです」