砂糖の脱水作用でカボチャの自然な甘味を引き出す

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ハロウィーンの主役に抗酸化作用

 この季節、私が研究の拠点としているニューヨークの街角のショーウインドーには、ジャック・オー・ランタンがたくさん並べられる。ジャック・オー・ランタンとは、カボチャをくりぬいて、三角の目鼻とギザギザの口をつけた魔よけの飾り物。ハロウィーンの名物である。

 ハロウィーンはケルト文化を起源としていると考えられており、もともとは秋の収穫祭であった。つまり、ちょうど今頃がカボチャの旬だということ。春に種をまかれたカボチャは夏の光を浴びてぐんぐん成長し、実りの秋を迎える。

 カボチャはなんといってもその色合いがいい。薄く扇形に切ると、深緑の皮と濃いだいだい色の果実の取り合わせが美しく、いかにもおいしそう(ただし、ジャック・オー・ランタン用には皮もだいだい色の大玉が好まれる)。緑は葉緑素、オレンジ色はカロテン。カロテンはニンジンやマスクメロン、そしてミカンのだいだい色と同じ色素。抗酸化作用があり、ビタミンAの原料にもなる。

 そして、カボチャにはさわやかな甘味がある。甘味は果実に蓄えられた炭水化物が糖質に変化することによって生じる。これは熟成と呼ばれるプロセス。熟成は果実の内部に含まれる分解酵素によるもの。分解酵素の反応は純粋な化学反応である。これは生命活動が途絶えても自動的に起こるので、甘味の増加は収穫後でも進行する。今回のレシピのように、煮たり、炒められたカボチャの実を箸でほぐすと細く糸を引くように見えるのは食物繊維がたっぷり含まれているから。ビタミンCやE、ミネラルも豊富なので、優れた健康食品といえる。

▽福岡伸一(ふくおか・しんいち)1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。

※この料理を「お店で出したい」という方は(froufushi@nk-gendai.co.jp)までご連絡ください。

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