患者が口にする「今さら薬を飲んでも遅すぎる」は勘違い
こう言うと、「これまでずっと不規則で乱れた生活を送ってきたから、今さら薬を飲んでも遅いよ」と投げやりな人がたくさんいます。しかし、これは大きな勘違いです。たとえばスタチンは、投与を開始した時点から予防や改善に有効だというエビデンスがあるのです。
今後、登場すると予想される認知症の薬も、状態が進んだ段階で投与しても、症状を軽くしたり進行を遅くできる可能性が追求されています。患者さんに対して「もう手遅れです」と伝えるのは医療者にとって敗北を意味します。医療者側は負けたくないですから、どの時点からでも「遅すぎる」ということがないような薬や治療法を探しています。ですから、これからは“薬の今”について正しく理解していないと恩恵にあずかれない可能性があるのです。
もちろん、病気になる前の段階、一次予防からしっかり取り組んでおけば、薬代や治療費といった経済的負担や、副作用などの身体的負担が少なくなります。まずはきちんと予防に取り組み、もしも病気になってしまったとしても、薬について正しく理解しておけばあきらめなくても済むケースがたくさんあるということです。