患者が口にする「今さら薬を飲んでも遅すぎる」は勘違い
前回も少しだけ触れましたが、今の製薬会社にとって最大のターゲットになっているのが「心不全」です。高齢化が進んで今後さらに患者が増えるのは間違いないため、心不全に有効な薬は大きな需要が見込めます。しかも、製薬会社の狙いは「すでに他の病気の治療に使われている薬が心不全にも有効である」というパターンです。近年は、糖尿病治療薬の適応拡大を目指し、心不全に対する有効性を証明するための大規模試験が盛んに行われています。
このような「既存の薬を他の病気にも使えるようにする」パターンは、製薬会社の多くが目指しているところです。新たに薬を開発するには莫大な費用と時間がかかりますし、以前に開発した薬は年数がたてばたつほど薬価が下がってくるため、他の病気にも使えるようになれば“リバイバル”という形で新たにヒットを狙えるからです。
中には、そうした既存の薬が持っている副作用を逆手に取り、本来使われていた病気とは別の病気や症状に使えるようにするパターンもあります。
たとえば、アレルギーに使われる「抗ヒスタミン薬」には強い眠気が出る副作用がありますが、それを利用した「睡眠改善薬」が発売されています。また、解熱鎮痛薬の「アスピリン」には、血液を固まりにくくする抗血小板作用もあります。ただ、心筋梗塞や脳梗塞の予防のために血をサラサラにする目的で服用する場合は、解熱鎮痛で使用する際の4分の1程度の成分量で十分です。そこで、アスピリンの成分量を減らした「バイアスピリン」が抗血小板薬として発売されているのです。