米国における乳がん治療の実際<5>日本式医療を守るために
病気にならないよう、正しい食事法や生活習慣の知識を身につけ実践することも大切です。定期健診を重視し、問題が見つかれば早めに対処を考えるなど、「健康は自分で守るものと考える」習慣が必要でしょう。
その上で「フリーアクセス」についていま一度、考え直す必要があります。フリーアクセスとは、どこの病院にも原則的に制限なく行ける制度で、「国民皆保険」とともに日本の公的医療保険制度の骨格を成すものです。
米国では、専門医にかかるためにはまずプライマリーケア医師に会い、専門的な治療の必要性を合意する必要がありますし、加入している保険で受けられる医療の範囲もばらばらです。一方、日本は、フリーアクセス制度に安住するあまり、軽い風邪や肩凝りでも大病院にかかったり、真夜中に救急窓口に行くケースが多々あります。こうしたフリーアクセスの乱用が医療経済を圧迫し、医師や看護師らの過剰労働を強い、本当に必要な患者さんに医療資源を集中できない原因となっているのです。
米国の医療プロセスはビジネスライクな半面、それぞれの診療現場では、医師や医療者が心のケアの重要性をよくわかっていて、家庭内暴力を受けていないか、話し相手はいるか、など質問してくれたりします。それは、サービス満載で時間的にきつきつになっている日本の医療のマイナス面を教えてくれる事実でもあります。日本の良い医療制度を守りつつ、病気とどう向き合うか、考える時期が来ていると思います。