ビタミン豊富な新玉ねぎ うま味と栄養分を逃さない扱い方
褐色に色づいたメラノイジン抗酸化、免疫向上作用
新玉ねぎの新とは新鮮の新。普通の玉ねぎは日持ちを良くするため収穫後、1カ月ほど風にあてて乾燥させる。だから表面が褐色になっている。これに対して、新玉ねぎは、早めに収穫した玉ねぎを乾燥させず、そのまま出荷したもの。ちょうど今くらいの春先、店頭に並ぶ。白くて、みずみずしく、皮が薄く、辛味が少ない。だからサラダなどで生食するのに向いている。
玉ねぎの層構造は、植物学的にいうと葉っぱが肥厚して積み重なったもの。ラッキョウ、ニンニク、チューリップ、ユリなどはみんなこの仲間。ここに養分をためているわけだが、玉ねぎの場合、光合成で作られた糖分をそのまま蓄えている。だから玉ねぎは甘いのである。
ちなみに、糖分を連結して蓄えたものが、米、小麦、とうもろこしなどのデンプンだが、連結してしまうと甘くなくなる。一方、玉ねぎは包丁で切ると涙が出てくることからわかるように、揮発性の辛味成分をたくさん含んでいる。これはもともと虫などに食われないための植物の知恵だったのだが、人間はこの辛味も玉ねぎの風味として楽しんでしまった。加熱すると辛味成分は飛ぶので、玉ねぎを炒めたり、焼いたりするとよけいに甘味が増す。そして玉ねぎを炒めると褐色に色づくのは糖とアミノ酸が反応してできるメラノイジンが生成するため。このメラノイジンは、抗酸化作用、活性酸素除去、発がん物質の消去、免疫の向上など機能性食材としての可能性を秘めているので研究が進められている。
▽福岡伸一(ふくおか・しんいち)1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。
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