国連気候サミット目前に医学誌ランセットが温暖化に強い警告
いま温暖化対策を進めなければ、病気や自然災害による犠牲者が激増し、世界経済も医療も逼迫する――。今月31日から英国で始まる国連気候変動枠組み条約締約国会議を前に、医学誌ランセットが気候変動と健康被害の関連性をまとめたリポートを発表し、波紋が広がっています。
それによれば、すでに起こっている高温による農業従事者や高齢者の死亡、熱帯伝染病の拡大、洪水や台風などによるコレラなどの水媒介性感染病の増加、花粉や山火事の煙による呼吸器疾患の悪化、極度の干ばつによる飢餓などが、今世紀末までに地球のほぼ全域に及ぶとしています。
今回の気候会議は温室効果ガス排出基準に関し、改めて各国の足並みの一致を確認するのが目的です。しかし来月1、2日に予定される首脳会議にロシアが対面での参加を見送り、中国も出欠を明らかにしていないなど、どれほどの結果を出せるか、懐疑的な声が上がっています。岸田首相は26日、会議に出席する意向を明らかにしました。
一方、米バイデン大統領は2030年までに温室効果ガス排出を05年比の50%まで減らす(日本は13年度比で46%)という高い目標を掲げ、再生可能エネルギーによる発電に急速に転換する史上最大の環境予算法案を提出。多くの大企業が支持を表明しているにもかかわらず、バイデン政権の成功を阻みたい共和党と、石炭産業から支援を受ける一部民主党議員の反対で、大幅な縮小を余儀なくされるのではと伝えられています。そうなると基準クリアは非常に難しくなり、世界の医療、経済、政治、安全保障に影響を及ぼすことが考えられます。
こうした排出国が二の足を踏む間に、犠牲になるのは開発国や貧困層、そして何よりも地球の未来を生きる幼い子供たちであることを、ランセットのリポートは強く警告しています。