日本では100人に1人が発症する「統合失調症」は治療で寛解できる
この低侵襲性脳刺激法は1900年代半ばからあるが、脳の刺激する場所を変えるなど改良が行われてきた。薬での改善効果が感じられにくい認知機能障害にも有効であることが明らかになっている。
「さらに今回の研究では、脳の左上側頭溝を刺激することで『社会認知機能』の障害が軽減されることを、世界で初めて確認しました」
これまでのtDCSを用いた研究では、脳の左前頭前野に対する陽極刺激を行っていた。その場合、「神経認知機能(記憶力など)」を改善させるが、「社会認知機能」への効果は弱かったという。それが、左上側頭溝を刺激したことで、社会認知機能に改善がみられた。社会認知機能を抗精神病薬とtDCSで比較したところ、抗精神病薬では小さい効果であったのに対し、tDCSでは中等度以上の効果が得られた。これらの結果から、患者が復学や就労といった社会復帰を促すための有効な治療法になることが期待される。
tDCSは、頭皮上に2つのスポンジ電極を置き、電極間に1~2ミリアンペア程度の微弱な電気を流し、脳の神経活動を調節する。麻酔の必要がなく、副作用のリスクが少ない。研究では1回20分、1日2回を連続5日間行うことで社会認知機能の障害に改善効果がみられた。統合失調症だけでなく、うつ病にも効果があるという。