認知症患者の「夕暮れ症候群」はなぜ起こる? 夕方になると家に帰ろうと落ち着きがなくなり…
認知症の患者さんが、夕方になると落ち着きがなくソワソワし出し、「お世話になりました。そろそろ家に帰ります」と、自宅にいるのに帰宅の準備を始めることがよくあります。この症状は、夕方から夜間にかけて現れるので「夕暮れ症候群」や「日没症候群」と呼ばれています。施設に入居している人の約10%、在宅介護を受けている人の約60%に、この症状がみられるといった研究データもあります。
認知症が進行すると、日内リズムの変動が起こります。健常者の場合、夕方でも脳は覚醒していて、眠くなりにくい状態です。しかし、認知症を発症すると日内リズムの変動により、夕方早くから覚醒度が低下して眠くなります。眠くなると、判断能力も低下して混乱が生じ、今いる場所がどこなのか分からなくなるため、帰宅しようとするのです。そのほかにも、自律神経の乱れや、薬の副作用も関係しているといわれています。
在宅で介護をしている患者さんが帰宅しようとした場合、家族は「ここが家ですよ」とストレートに伝えてしまいがちです。ですが、本人は30~40年前の記憶の世界に戻って生活しているので、今いる場所が現在住んでいる家だと認識できません。頭ごなしに否定すると、患者さんはさらに混乱してしまい、せん妄や徘徊を引き起こす恐れがあります。