認知症患者の施設での金銭トラブルを防ぐために貴重品の管理はどうすべきか
認知症が進行して在宅での介護が難しくなると、施設への入居を検討するケースが少なくないでしょう。そうした施設内で多いのが貴重品管理のトラブルです。認知症を発症すると、お金に対する執着が異常に強くなる方がよく見られます。背景には、「若い頃に経済的に厳しい環境で育った」「長い間1人暮らしをしていて金銭の管理を自分で行っていた」ことなどがあると考えられます。認知症の方がよく「お金を盗まれた」と訴えるのもお金への執着からくる妄想で、「物盗られ妄想」と呼ばれる認知症の症状のひとつです。介護士や家族など、顔を合わせる機会が多い人物を疑うのがこの症状の特徴です。
トラブルを避けるために、認知症患者さんが多く入居する施設では、貴重品の持ち込みを完全に禁止している所が少なくありません。一方で、家族と職員でよく相談した上で現金の持ち込みを許可し、自由にお弁当やお菓子、飲み物を購入できる施設もあります。
どうしても、そうした施設では貴重品トラブルが起こる可能性があると認識して、家族は対策しておきましょう。
まず、認知症の方が「盗まれた」とパニック状態になっていたら、家族の人は否定せず、まずは本人の主張を傾聴しましょう。「一緒に捜そう」「必ず見つかるので大丈夫だよ」といった言葉がけを行うと、本人は安心して落ち着きます。疑われた家族は、イライラしてつい強い口調で「盗っていない」と否定したくなるでしょう。ですが、記憶障害により貴重品を置いた記憶自体がなくなっているので、まさか自分がどこかに置き忘れたと考えるのが難しいのです。強い態度で接するとさらに混乱して不安が増し、興奮して、時には介護者に暴力を振るうケースもときどき目にします。