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名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

「一言主義」で失われる正しい情報…わかりやすい真実なんてない

公開日: 更新日:

 マスクの有効性については、多くの研究で確認された事実だという意見も、マスクは無効であるという多くの研究があるという意見も、それぞれに正しく、それぞれに正しくないのである。

 現実に報告された研究結果は、そのように紋切り型に表現できるものではない。昨日もテレビをなんとなく見ていたら、「あなたの人生を一言で表すと」なんて質問を街行く人に投げかけている番組をやっていて、わかりやすい短いフレーズを好むのが今の流行なのだろう。実際に放送されるものは、何か気の利いた一言を言った人で、長々しゃべる人や、一言なんかで言えないよという人は取り上げられない。そういう世の中がある。

■「解釈」を「結論」にすり替えるな

 私の記事はまさにそういう後者にあたるもので、マスクの効果に対して、長々とあいまいなことを書き続けても、何を言っているのかわからないと言われるのが関の山で、「マスクの効果を一言で表すと」というような反応が世の中に好まれている。


 そうした一言を求める人たちに対してできるだけ短いフレーズで答えるならば、「マスクを着けるべきだという決定的な証拠も、着けなくていいという確実な証拠も現状ではないし、これからも出てこないかもしれない」ということだろうか。

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