著者のコラム一覧
名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

「一言主義」で失われる正しい情報…わかりやすい真実なんてない

公開日: 更新日:

 ただそんな答えに対しては、「一言でというのは、そのようなあいまいな答えを求めているわけではないので、もう少しはっきり言ってください」ということになるのだろう。世に流れる情報は、情報全体の一部に過ぎない。全体をあたかも代表しているかのような都合のいい「一言」が強調されて流される。どの「一言」を選ぶかという解釈がそこにはあるのだが、それを解釈ではなく、情報そのものの結論として流す。「マスクは有効」あるいは「マスクは無効」というように。しかし情報の全体像は、ここまで多くの字数を使って説明してきたように、そういう「一言」では表しがたい複雑なものだ。

 これは情報を流す側の問題だけではない。受け手もまた「一言」を望んでいる。私の1600字ですら読まれるかどうかわからない世の中で、情報全体が流されるとしても、その多くは読まれることなく、わかりやすい一言だけが独り歩きする。

 今日の結論は明らかだ。正しい情報など流れないし、読まれない。わかりやすい「一言」が切り取られて、正しい情報かのように流され、そればかりが受け取られる世の中がすでに確固として出来上がっている。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人原前監督が“愛弟子”阿部監督1年目Vに4日間も「ノーコメント」だった摩訶不思議

  2. 2

    巨人・阿部監督1年目V目前で唇かむ原前監督…自身は事実上クビで「おいしいとこ取り」された憤まん

  3. 3

    松本人志は勝訴でも「テレビ復帰は困難」と関係者が語るワケ…“シビアな金銭感覚”がアダに

  4. 4

    肺がん「ステージ4」歌手・山川豊さんが胸中吐露…「5年歌えれば、いや3年でもいい」

  5. 5

    貧打広島が今オフ異例のFA参戦へ…狙うは地元出身の安打製造機 歴史的失速でチーム内外から「補強して」

  1. 6

    紀子さま誕生日文書ににじむ長女・眞子さんとの距離…コロナ明けでも里帰りせず心配事は山積み

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    メジャー挑戦、残留、国内移籍…広島・森下、大瀬良、九里の去就問題は三者三様

  4. 9

    かつての大谷が思い描いた「投打の理想」 避けられないと悟った「永遠の課題」とは

  5. 10

    大谷が初めて明かしたメジャーへの思い「自分に年俸30億円、総額200億円の価値?ないでしょうね…」