著者のコラム一覧
青島周一勤務薬剤師/「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

糖尿病治療の最新ゲームチェンジャー「GIP/GLP─1受容体作動薬」はどんな薬なのか?

公開日: 更新日:

 今年4月、世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬、チルゼパチド(商品名:マンジャロ(R))が発売されました。

 GIPとはグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド、GLP-1とはグルカゴン様ペプチド-1と呼ばれる物質で、両者はともにインクレチンと総称されるホルモンの一種です。

 チルゼパチドは、GIPおよびGLP-1が生体内で作用する部位(受容体)を刺激することで両者の働きを強めます。GLP-1受容体を刺激する薬(GLP-1受容体作動薬)は、既に複数承認されていて、日本でも糖尿病の治療薬として実用化されています。しかし、GIPとGLP-1受容体の両方を刺激する薬は、チルゼパチドが初承認となります。

 なお、この薬は週に1回の注射製剤。患者さんが自分で注射できるよう、1回使いきりの自己注射器を使います。

 GLP-1とGIPはどちらも、膵臓のベータ細胞に働きかけることで、インスリン(血糖値を下げるホルモン)の合成や分泌を促します。GLP-1はまた、膵臓のアルファ細胞に働きかけ、血糖値を上げるホルモンであるグルカゴンの分泌も抑制します。チルゼパチドは、これらの作用を促すことで血糖値を下げるのです。

 GLP-1は満腹感の増大や食欲の低下をもたらし、GIPは脂肪の分解を促す作用も知られています。そのため、この薬を使うと、体重の減少効果も期待できます。

 実際、肥満患者に、チルゼパチドを週1回投与する臨床試験では、大幅な減量効果が報告されています。この研究では、体格指数(BMI)が30以上、もしくは27以上で体重が多いことに関連した糖尿病以外の合併症のある2539人(平均年齢44.9歳、平均体重104.8キロ、平均BMI38.0)が対象となりました。

 被験者は、同薬を5ミリグラム注射する群、10ミリグラムの群、15ミリグラムの群、プラセボ(偽薬)群の4グループにランダムに振り分けられ、各グループの体重変化率が比較されました。

 その結果、治療開始から72週目の体重変化は、プラセボ注射群で3.1%減だったのに対して5ミリグラム群では15.0%減、10ミリグラム群で19.5%減、15ミリグラム群で20.9%減でした。

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